公式戦3連敗を喫した後、マンチェスター・ユナイテッドの周辺はとても騒がしかった。「マン・ユナイテッドの危機」、「ウェイン・ルーニーの機能不全」といった記事やコメントが紙面を飾ったのだ。特に新監督のジョゼ・モウリーニョにとっては、さぞうっぷんの溜まった長い長い1週間だったことだろう。
先週末、レスター・シティに勝利したことでようやく落ち着きを取り戻したようだが、このポルトガル指揮官が「フットボールのアインシュタイン(天才)」と皮肉る英国メディアとの戦いが終息を迎えるとはとても思えない。
■ルーニーが外れてボグバが躍動
レスター戦で最も注目を集めた出来事が、ルーニーがベンチに下がったことであることに疑いの余地はない。なぜなら、ピッチ上で多くの変化が起こったのだから。ユナイテッドは、パフォーマンスを落としたキャプテンが足を引っ張らなかった場合、どのようなプレーが可能なのか、見せつけた。
ポール・ポグバはこれまでと打って変わったプレーを披露したうちの一人だ。ユナイテッドでの初ゴールを記録したのはもちろんのこと、搭載するエネルギーの大きさと推進力の強さ、そして途切れることのない集中力を示した。ユナイテッドが大きなリードを持ってハーフタイムを迎えられたのにも納得がいく。
試合開始直後こそ少し動きが重かった印象だが、徐々にプレーのテンポを上げて前線の4人の動きを活性化させることに成功した。彼の巧妙なスルーパスをジェシー・リンガードがはたき、ボールを受けたフアン・マタがリードを広げる得点を決めた。
ポグバは優れた足元の技術とボール奪取の能力を存分に発揮し、レスターの選手たちをピッチ中で追いやり、間延びさせた。ハーフタイムを迎える頃、フォクシーズはすでに息切れ状態だった。
刺激的ですべてを凌駕するような攻撃こそ、今までルーニーによって妨げられていたユナイテッド本来の形と言えるだろう。
■拍手が送られたのは大量得点だけが理由ではない
スタンドの怒りと失望は歓喜と声援に変わった。どうオブラードに包んだとしても、長らくユナイテッドをけん引してきたルーニーにとって悪い意味で大きな意味を持つ1日になった。
キャプテンのベンチ降格に呼応するようにユナイテッドは躍動し始めた。オールド・トラッフォードへ詰めかけた観衆はもちろんのこと、本人にとっても序列が変わったことを認識せざるを得ない出来事だったはずだ。
今回起きた一連の“ルーニー不要論”は、結果として動かない10番とマタのようなオフ・ザ・ボールの動きが活発な選手とで攻撃にどのような変化が起こるのかを示した。このスペイン人MFは頻繁に空いたスペースを見つけては顔を出し、相手DFを定位置からつり出し、ユナイテッドにチャンスを生み出し続けた。
冬の時代を迎えた主将のためにあえてエクスキューズを出すならば、ユナイテッドが記録した4ゴールのうち、3つはセットプレーから生まれた産物だった、ということだろうか。流れの中から得点を生み出すことができると証明する必要性は、依然として残されている。
しかし、精錬されたセットプレーだけがレスターを追い詰めたのではないことは、隣に座ったブロンドの髪をなびかせる美しい女性にうつつを抜かしてピッチから目を背けていた者でない限り、容易に判断できるはずだ。
ハーフタイムを迎えてロッカーに戻るユナイテッドの選手たちにスタンディング・オベーションが起こったのは、ピッチ上で魅力的なフットボールが展開されていたからにほかならない。
プライベートで植毛を始めた頃からだろうか。ルーニーから発せられる輝きは、年々減り続けている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160930-00000010-goal-socc
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